【第1回】 軟水とは何かを知る ~水道水・軟水・硬水・純水の違いを科学する~ (全5回連載 軟水を科学する)
水は私たちの暮らしに欠かせない存在ですが、水道水・軟水・硬水・純水には、それぞれ異なる特徴があります。第1回では、「軟水とは何か」をテーマに、硬度の基本やそれぞれの水の違いを分かりやすく解説します。
また、日本の水道水は本当に軟水なのか、地域によって硬度が異なる理由や全国の水質傾向についてもご紹介します。軟水器と純水器の違いにも触れながら、軟水を理解するための基礎知識を一緒に学んでいきましょう。
そもそも「軟水」とはどんな水?
軟水という言葉は、私たちの日常生活でよく耳にしますが、その違いを正しく理解している方は意外と多くありません。軟水とは、カルシウムやマグネシウムなどの硬度ミネラル分が少ない水のことで、反対に多く含まれる水は硬水と呼ばれます。日本の水道水は一般的に軟水に分類され、飲料や調理、美容、熱帯魚の飼育など、さまざまな場面で利用されています。
硬度とは?軟水と硬水の違い
硬度とは、水に含まれるカルシウムやマグネシウムの量を表す指標です。一般的には、硬度0~60mg/Lを「軟水」、61~120mg/Lを「中硬水」、120mg/L以上を「硬水」と分類します。日本の水道水の多くは軟水に分類されますが、地域によって硬度は異なります。また、硬度の違いは飲み水や料理、さまざまな用途に影響を与えることから、水の特徴を知る上で重要な指標となっています。
水道水・軟水・硬水・純水の違いを比較してみよう
ここでは、水道水、軟水、硬水、純水の違いを整理してみましょう。私たちが普段使っている水には、「水道水」「軟水」「硬水」「純水」などさまざまな呼び方があります。しかし、これらは同じ基準で分類されているわけではありません。
水道水は、水道法で定められた水質基準を満たした生活用の水です。カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを適度に含み、消毒のために塩素も添加されています。日本の水道水は多くの地域で軟水ですが、地域によって硬度は異なります。
軟水は、水に含まれるカルシウムやマグネシウムが少ない水を指します。一般的には硬度60mg/L以下の水が軟水とされ、日本の水道水の多くがこれに該当します。ただし、軟水であってもナトリウムや塩化物、硫酸イオンなど、硬度以外の成分は含まれています。
硬水は、カルシウムやマグネシウムを多く含む水です。一般的には硬度120mg/L以上の水を指し、ヨーロッパなどでは硬水の地域が多く見られます。ミネラルが豊富な一方で、加熱や乾燥によってスケールが発生しやすい特徴があります。
純水は、カルシウムやマグネシウムだけでなく、ナトリウムや塩化物などのイオン成分をできる限り除去した水です。そのため、軟水とは異なり、溶け込んでいる成分が非常に少ないことが特徴です。純水は半導体や医療分野、研究用途など、高い水質が求められる場面で利用されています。

ここで重要なのは、「軟水=純水」ではないという点です。軟水はカルシウムやマグネシウムが少ない水ですが、その他の成分は残っています。一方、純水はそれらを含めた多くのイオン成分を除去した水です。この違いは、本シリーズの後半で詳しくご紹介します。
日本の水道水は本当に軟水なの?
日本の水道水は、世界的には一般的に軟水に分類されます。しかし、その硬度は全国で一様ではなく、地域によって違いがあります。特に、地質や水源の違いによって、水の硬度は変化します。そのため、お住まいの地域の水質を知ることは、飲み水や料理、入浴など、日常生活で水をより理解する上で役立ちます。
なぜ地域によって硬度が違うのか
水の硬度は、主に水に含まれるカルシウムやマグネシウムの量によって決まります。これらの成分は、雨水や地下水が土壌や岩石に触れる過程で水中に溶け込むため、地域の地質によって硬度に違いが生じます。また、河川水や地下水など、水源の種類や水が地中にとどまる時間も硬度に影響します。
一般的に、石灰岩などカルシウムを多く含む地層を流れる水や、地中に長く滞留する地下水は、硬度が高くなる傾向があります。一方、ミネラル分の少ない地質を流れる河川水や、地中での滞留時間が短い水は、比較的硬度が低くなる傾向があります。このような地質や水源の違いが、地域ごとの水道水の硬度差につながっています。
日本全国の水道水硬度マップ
日本全国の水道水は、全体として軟水に分類されますが、その硬度には地域差があります。日本水道協会のデータや東京大学による全国調査(2021年)によると、水道水の硬度は水源や地質の違いによって変化し、地域ごとに異なる特徴が見られます。

北海道・東北地方では比較的硬度が低い地域が多い一方、関東地方では全国的にみても硬度が高い地域が多く、特に千葉県、埼玉県、東京都などで高い傾向が報告されています。また、中部、近畿、中国・四国、九州地方では、水源や地質の影響を受けるため、地域によって硬度が大きく異なります。
このような地域差を知ることは、飲み水や料理、入浴など、日常生活における水の特徴を理解する上で役立ちます。また、ご家庭の水道水の硬度を把握することで、水に関するさまざまな製品や設備を選ぶ際の参考にもなります。
このように、日本の水道水は全体として軟水に分類されますが、地域や水源によって硬度は大きく異なります。その違いを理解することは、水質への理解を深める第一歩となります。
次は、この硬度をコントロールする「軟水器」の仕組みや役割について、イオン交換樹脂による軟水化の原理も交えながら詳しくご紹介します。
軟水器は何のために使うの?
軟水器は、水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を除去し、軟水をつくるための装置です。家庭用から業務用まで幅広く利用されており、美容室や理容室、熱帯魚の飼育、ボイラー設備など、さまざまな分野で活用されています。では、軟水器はどのような仕組みで軟水をつくり、どのような用途で利用されているのでしょうか。
本記事では、軟水器の基本的な役割と用途について分かりやすくご紹介します。
軟水器はミネラルを取り除く装置
軟水器の主な役割は、水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を除去し、軟水をつくることです。これらの成分を多く含む水は硬水と呼ばれ、飲料水としてはミネラルを感じやすい一方で、石けんや洗剤の泡立ちが悪くなったり、水まわりにスケールが付着しやすくなったりすることがあります。そのため、用途に応じて軟水が利用される場面も多くあります。
軟水器にはさまざまな方式がありますが、最も広く使用されているのがイオン交換樹脂を利用した方法です。イオン交換樹脂は、水中のカルシウムやマグネシウムを吸着し、代わりにナトリウムイオンを放出することで硬度を低減します。この仕組みにより、家庭用から業務用まで幅広い分野で軟水が利用されています。また、お茶やコーヒーなどの飲料分野でも、水の硬度が風味に影響するといわれており、用途に応じた水質が求められています。
一方で、「軟水器を使用すれば、必ず良質な軟水が得られる」とは限りません。樹脂の種類や充填量、水の流れ、使用条件などによって軟水の品質は変化します。これらの違いについては、次回以降のシリーズで実験を交えながら詳しくご紹介していきます。
軟水器と純水器は何が違うの?
軟水器と純水器は、どちらも水質を改善する装置ですが、その目的や仕組みは異なります。軟水器は、水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を除去することを目的としており、その他のミネラル成分は基本的に残ります。そのため、飲料や調理、美容、ボイラー設備など、さまざまな用途で利用されています。
一方、純水器は硬度成分だけでなく、ナトリウムや塩化物などのイオン成分もできる限り除去し、高純度の水を製造する装置です。そのため、半導体や医療、研究用途をはじめ、洗浄や水質分析など、高い水質が求められる分野で広く利用されています。
このように、軟水器と純水器は目的が異なるため、どちらが優れているというものではありません。用途に応じて適切な水質を選ぶことが重要です。なお、本シリーズでは「軟水」に焦点を当てていますが、純水との違いについても適宜ご紹介しながら解説していきます。
次回予告”純度の高い軟水を作る”ことは意外と難しい
次回は、「純度の高い軟水をつくることは、なぜ難しいのか」をテーマに解説します。同じイオン交換樹脂を使用していても、樹脂の充填量や水の流れ、通水速度、構造設計の違いによって、得られる軟水の品質は大きく変わります。実験や動画も交えながら、純度の高い軟水をつくるために本当に大切なポイントをご紹介します。
「軟水器ならどれも同じ」と思われがちですが、実際にはその性能を左右する要素は数多くあります。本シリーズを通じて、軟水づくりの仕組みを理解し、ご自身の用途に合った軟水器を選ぶ際の判断材料としてお役立ていただければ幸いです。ぜひ次回もご覧ください。
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