第6回 純水装置とイオン交換樹脂の実践ガイド 応用編 (全12回) - イオン交換樹脂のことなら【レジンライフ株式会社】

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第6回 純水装置とイオン交換樹脂の実践ガイド 応用編 (全12回)

水処理における技術は、最先端分野においては日々進化を遂げており、特に純水装置とイオン交換樹脂の活用は重要な役割を果たしています。本記事では、純水の定義やその用途から始まり、製造の仕組みについて詳しく解説します。

さらに、イオン交換樹脂における具体的な運用手法を学び、実践的なテクニックを習得することが可能です。特に、樹脂の再生についての知識は、コスト削減や資源の有効活用にも直結します。

本ガイドを通じて、読者は純水装置の仕組みやイオン交換樹脂の原理を理解し、水処理システムの効率を高めるための実践的な知識を身につけることができます。

装置の基本概念

水は、私たちの生活や産業活動に欠かせない基本資源であり、その純度や性質によって用途や効果が大きく変わります。なかでも「純水」と「軟水」は、水処理の分野でよく比較される代表的な種類であり、それぞれに異なる特性と役割があります。

本記事では、現在商業用途で広く使用されているイオン交換樹脂を用いた純水装置を中心に、純水の仕組みや用途についてわかりやすく解説します。あわせて、軟水との違いや、目的に応じた使い分けのポイントについても触れていきます。

純水の定義と用途

純水とは、水分子以外の不純物を極限まで取り除いた高純度の水を指します。古くからの例えとして、理論純水は「25mプールに角砂糖3個」、超純水は「耳かき一杯の不純物」を加えた程度と表現されることがあります。それほどまでに、両者の純度は非常に高い水といえます。

純水は、化学実験、医療機器の洗浄、食品製造など、幅広い分野で利用されています。たとえば医療分野では、点滴液や注射液の溶媒、器具の洗浄用水として、また化学産業では合成反応の基剤や装置洗浄水として欠かせません。

さらに、半導体や電子部品の製造工程では、微量な不純物が製品の品質に直接影響するため、純水や超純水の使用が必須となります。特に近年では、集積回路の高密度化に伴い、超純水の純度要求が年々高まっています。そのため、純水製造装置には精密な制御と高性能なイオン交換樹脂、フィルター、膜分離技術などが求められ、装置や配管材質の清浄度管理も極めて重要です。つまり耳かき一杯では多すぎると言われます。

軟水化の仕組み

軟水化は、水中のカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を除去する水処理技術です。イオン交換樹脂を用いて、これらの硬度成分をナトリウムイオンと交換することで水の硬度を下げ、スケールの発生を防ぎます。

この技術は、水道水中の硬度が高い地域の家庭用処理から、ボイラー水や産業用プロセスまで幅広く利用されています。特にボイラー水の軟水化は、スケール防止と熱効率向上のために欠かせません。

軟水化や純水製造といった水処理は、いずれもイオン交換樹脂の性能に支えられています。樹脂の特性を正しく理解し、適切に管理することが、安定した水質と高効率な運転を実現する鍵となります。

純水装置プロセス

水処理の技術が進化する中、特に注目されるのが「純水製造」のプロセスです。その中で重要な役割を果たすのが、イオン交換樹脂です。本記事では、イオン交換樹脂の仕組みと、それを利用した純水装置の仕組みについて詳しく解説します。

イオン交換樹脂の仕組み

イオン交換樹脂は、その表面および内部に多数のイオン交換サイト(官能基)が存在します。これにより、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの硬度成分を、ナトリウムイオンと選択的に入れ替えることが可能になります。

イオン交換反応の模式図

たとえば、ナトリウムイオンを保持したカチオン交換樹脂に硬水を通水すると、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンが樹脂内部へ拡散し、樹脂中でイオン交換反応が起こります。

その結果、樹脂の官能基にカルシウム・マグネシウムが吸着され、代わりにナトリウムイオンが水中に放出されます。これにより硬度成分が除去され、軟水が得られます。

このようなイオン交換の仕組みは、家庭用から工業用まで幅広く利用される軟水化の基本原理です。では、実際の設備としてはどのような流れでこのプロセスが行われるのでしょうか。

純水・軟水装置の仕組み

軟水装置および純水製造装置は、イオン交換樹脂を用いて水中の不純物や硬度成分を除去し、高純度な水を得るためのシステムです。これらの装置では、まず水源から取り込んだ原水を目的とする水質に応じて前処理し、懸濁物質や有機物などの不純物を除去します。その後、イオン交換樹脂を充填した塔に通水し、残留イオンを選択的に交換・除去します。

軟水装置の場合、ナトリウム形カチオン交換樹脂(R–Na、RはResinを意味します)を用います。前処理された水を樹脂塔に通すことで、水中のカルシウム(Ca²⁺)やマグネシウム(Mg²⁺)などの硬度成分が樹脂に吸着し、代わりにナトリウムイオン(Na⁺)が水中に放出されます。これにより、水の硬度が低下し、軟水が得られます。

処理できる硬度成分の量は、イオン交換樹脂に吸着されているNa⁺の量(交換容量)によって決まります。一定量のCa²⁺やMg²⁺を除去すると、樹脂中のNa⁺が消費されるため、再生処理が必要となります。再生工程では、一般的に塩化ナトリウム(NaCl)を使用し、樹脂に再びNa⁺を吸着させて機能を回復させます。この再生サイクルを繰り返すことで、イオン交換樹脂を長期的に利用することが可能となります。

純水装置も基本原理は軟水装置と同様ですが、使用するイオン交換樹脂の種類が異なります。純水装置では、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の2種類を組み合わせて使用します。カチオン樹脂には強酸性型や弱酸性型、アニオン樹脂には強塩基性型や弱塩基性型があり、必要な処理水量や装置規模に応じて使い分けられます。

軟水処理ではナトリウム形樹脂(R–Na)を用いるのに対し、純水装置ではカチオン樹脂を水素形(R–H)、アニオン樹脂を水酸化物形(R–OH)として運転します。これにより、水中の陽イオンはH⁺に、陰イオンはOH⁻に置き換えられ、両者が結合して水(H₂O)となることで、純水が得られます。

純水装置にはさまざまな構成方式があります。代表的なものとして、2床2塔式、2床3塔式、3床4塔式、4床5塔式などがあり、処理目的や水質要求に応じて構成が選定されます。一般的な流れとしては、原水がまずカチオン樹脂塔を通過し、ここで陽イオンが除去され水が酸性化します。次に、脱気塔で炭酸ガスなどの溶存ガスを除去し、その後アニオン樹脂塔で陰イオンを除去することで、純水レベルまで水質が向上します。脱気塔を設けることで、アニオン樹脂への炭酸負荷が軽減され、処理効率が高まります。

また、カチオン樹脂とアニオン樹脂を同一塔内で混合して使用する「混床式」もあります。混床では両樹脂が同時に作用し、H⁺とOH⁻の交換が連続的に進むため、装置出口での純水の立ち上がりが早く、より高純度な水を得ることができます。

イオン交換樹脂が不純物で飽和すると、再生処理が必要となります。再生方式には「並流再生」と「向流再生」があり、特に大型設備では再生剤の効率利用と高い立ち上がり純度を得るために、向流再生方式が採用されるケースが多く見られます。再生後の樹脂は再び純水の製造と再生を繰り返すことで、安定的に高純度水を供給することが可能です。

イオン交換樹脂塔に原水を導入する前には、水質や原水中の成分に応じた前処理が必要です。これは、樹脂層での閉塞や性能低下を防ぎ、安定した処理を維持するための重要な工程です。

前処理ユニットでは、まず懸濁物質やコロイド状粒子を物理的に除去します。原水中にフミン質などの有機物が多い場合は、アニオン交換樹脂の汚染を防ぐため、凝集沈殿やろ過を強化することが推奨されます。これにより、樹脂層への負荷を軽減し、長期的な運転安定性を確保します。

続くイオン交換ユニットでは、樹脂層を通過する過程で陽イオン・陰イオンが選択的に除去され、高純度な純水が生成されます。用途や要求水質によっては、この後に逆浸透膜(RO)、UF膜処理、紫外線照射、脱気、カートリッジボンベによる精製などの二次処理を組み合わせることで、理論純水に近い「超純水」レベルまで水質を高めることが可能です。

このように、前処理・イオン交換(一次処理)・二次処理の各工程が連携することで、安定した高品質の純水・超純水が得られます。イオン交換樹脂はその中心的役割を担い、効率的かつ持続的に高純度水を提供するための要となる存在です。

4床5塔式設備での再生

水処理技術の中でも、イオン交換樹脂は極めて重要な役割を担っています。特に純水装置では、樹脂の性能を最大限に発揮させるために、処理順序や再生方式を最適化した構成が採用されています。その代表例が「4床5塔式純水製造設備」です。

この方式では、被処理水が次の順序で処理されます。
弱酸性陽イオン交換樹脂 → 強酸性陽イオン交換樹脂 → 脱気設備(脱炭酸塔) → 弱塩基性陰イオン交換樹脂 → 強塩基性陰イオン交換樹脂

再生方式は、薬品利用効率と純度立ち上がりの良さから向流再生が基本とされています。

まず、弱酸性陽イオン交換樹脂が水中の多価イオン(Ca²⁺、Mg²⁺など)を優先的に吸着します。これにより、続く強酸性陽イオン交換樹脂では主にナトリウムなどの一価イオンを効率的に除去できます。脱気設備では水中の炭酸ガスを除去し、後段の陰イオン交換樹脂への負荷を軽減します。

陰イオン側では、弱塩基性樹脂が主に鉱酸イオン(Cl⁻、NO₃⁻など)を除去し、残存するシリカなどの除去しづらいイオン成分を最後に強塩基性樹脂で吸着します。

次いで再生処理です。4床5塔式純水装置では、弱酸性樹脂と強酸性樹脂、弱塩基性樹脂と強塩基性樹脂を組み合わせることで、効率的な再生を実現しています。

  • カチオン側では、多価イオンを弱酸性樹脂で先に吸着させることで、強酸性樹脂の再生効率を向上。
     さらに、強酸性樹脂の再生で使用された酸の残留分を利用して、弱酸性樹脂の再生にも活用できるため、薬品の有効利用が可能です。
  • アニオン側では、弱塩基性樹脂で鉱酸を主に吸着し、強塩基性樹脂の再生剤使用量を削減
     こちらも同様に、強塩基性樹脂の再生で使用したアルカリの一部を弱塩基性樹脂の再生に利用でき、再生効率の向上につながります。

このように、強樹脂と弱樹脂を組み合わせた多床多塔構成は、再生剤使用量の削減、再生効率の向上、薬品コスト低減に加え、安定した純水品質の維持にも大きく寄与します。

この「強樹脂と弱樹脂の組み合わせ」により、以下のような効果が得られます。

  • 強酸性樹脂・強塩基性樹脂の再生剤使用量の削減
  • 再生剤の有効利用(強樹脂の再生薬が弱樹脂の再生にも寄与)
  • 再生効率と水質安定性の両立
  • 処理負荷の分散による樹脂寿命の延長

このようなプロセス設計は、特に高い水質要求や大量の処理水を必要とする純水製造システムにおいて有効です。イオン交換樹脂の特性を段階的に活かすことで、薬品コストの削減と安定した高純度水の供給を両立させることができます。

純水装置の運用方法

純水装置は、イオン交換樹脂を用いて水中の不純物(イオン成分)を除去し、高純度の水を生成するシステムです。その運用は、まず原水の性状や要求される水質・水量に応じて、最適な装置設計と運転条件を設定することから始まります。

具体的には、原水の分析を行い、その結果に基づいて適切な前処理方法と純水設備、イオン交換樹脂の種類を選定します。さらに、除去対象イオンや処理目的に応じた樹脂構成を組み合わせ、運転時の流量や接触時間、負荷条件を適正に管理することが求められます。

また、安定した水質を維持するためには、定期的な設備点検とメンテナンスが不可欠です。樹脂性能の評価や純水品質のモニタリングを継続的に実施し、必要に応じて再生条件の見直しや樹脂交換を行うことで、長期的に安定した運転を実現できます。

イオン交換樹脂の劣化と管理の重要性

イオン交換樹脂は、使用を続けるうちに水中の不純物イオンを吸着し、やがて飽和状態に達します。すると、純水をつくる能力が徐々に低下していきます。このため、定期的な再生処理が欠かせません。

再生とは、樹脂に吸着したイオンを酸やアルカリ溶液で洗い流し、再びイオン交換機能を回復させる工程です。使用状況や水質条件によって最適な再生方法や頻度は異なりますが、正しく管理することで樹脂を長く安定して使うことができます。

一方で、再生を繰り返す中で樹脂自体は少しずつ劣化していきます。たとえば、イオン交換容量の低下、水分量の増加、粒子のひび割れや破砕、イオン交換速度の低下などが代表的です。これらが進行すると、最終的には交換が必要となります。

純水装置の性能は、イオン交換樹脂の状態に大きく左右されます。だからこそ、定期的な性能評価と適切な再生・交換管理がとても重要です。こうした日々のメンテナンスが、結果的に装置全体の安定稼働と高品質な純水の供給につながります。

次回からは、イオン交換樹脂の樹脂劣化のメカニズム、それによって実際に起こり得るトラブル事例や、さらに性能評価の具体的な方法について、詳しく解説していきます。

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この記事の著者

永田 祐輔

2022年3月、29年間勤務した大手水処理エンジニアリング会社から独立しました。前職では、イオン交換樹脂を中心とした技術開発、品質管理、マーケティング戦略において多くの経験を積んできました。これらの経験を生かし、生活に密着した水処理技術から既存の水処理システムまで、幅広いニーズに対応する新たな事業を立ち上げました。

このブログでは、水処理技術や環境保護に関する情報を発信しています。皆さんと共に、きれいで安全な水を未来に残すための方法を考えていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします!

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