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軟水器と純水器、イオン交換樹脂の特徴比較

水質に関する選択肢は多岐にわたりますが、特に「軟水器」と「純水器」は用途や効果が異なり、選ぶ際にはしっかりした知識が必要です。本記事では、これらの基本知識から始まり、イオン交換樹脂の特性や役割についても解説します。水処理におけるそれぞれの機器のメカニズムや性能を理解することで、選択肢を適切に判断できるようになるでしょう。また、効果と用途の違い、さらには設置する際の注意点やコスト、メンテナンスに関するポイントにも触れるため、実際の導入や活用を考えている方にも非常に役立ちます。この情報をもとに、自分の生活やビジネスに最適な水処理装置を選び、安心で快適な水質を手に入れましょう。

軟水器と純水器の基本知識

水は私たちの生活に欠かせない資源であり、その性質や使い方によって、私たちの健康や暮らしに大きな影響を与えます。特に「軟水」と「純水」は、用途や特性が異なるため、理解しておくことが重要です。本章では、軟水器と純水器の基本的な知識について詳しく解説します。

軟水器とは

軟水器は、水に含まれるカルシウムやマグネシウムといった硬水成分を取り除く装置です。これらの成分は水道水に多く含まれ、特に地下水を利用している地域ではその傾向が強く見られます。硬水は洗濯や食器洗い時に石鹸や洗剤の効果を低下させるほか、風呂場やキッチンの配管に石灰分を付着させ、長期的に設備の劣化を引き起こすことがあります。軟水器を使用することで、柔らかな水質を得ることができ、洗浄力の向上や配管の保護、さらには肌にも優しい水を得られるというメリットがあります。

家庭用軟水器では、再生設備を備えたタイプが一般的です。イオン交換樹脂が定期的に再生される仕組みで、業務用設備でも同様システムが自動化で設定されています。

では「再生」とは何でしょうか。イオン交換樹脂はナトリウムイオンを吸着した状態で使用され、軟水器に水道水を通すと水道水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンと樹脂中のナトリウムイオンが交換されます。この過程でイオン交換樹脂にカルシウムやマグネシウムが吸着され、元々吸着していたナトリウムイオンが水中に放出され、軟化処理となります。一方で、イオン交換樹脂にカルシウムやマグネシウムが吸着されてくると、ナトリウムイオンが減少し、軟化性能が低下します。このときの処理が再生になります。吸着したカルシウムイオンやマグネシウムイオンをナトリウムイオンで置き換えます。置き換えられたカルシウムやマグネシウムは排出され廃液として処理されます。そして、再生されたイオン交換樹脂は再び軟水の製造に利用されます。

再生の原理は、イオン交換樹脂の「選択性」に基づいています。これは樹脂がどのイオンを優先的に吸着するかを示すもので、イオンの価数や濃度によって変化します。通常、カルシウムやマグネシウムはナトリウムよりも選択性が高いため、水道水の処理ではカルシウムイオンやマグネシウムイオンが優先的に吸着されます。

では、なぜ再生が可能なのでしょうか。それは、濃度によって選択性が変わるためです。再生時には、高濃度のナトリウムイオンを含む再生剤が使用されることで、カルシウムやマグネシウムがナトリウムイオンに置き換わります。また、再生剤として一般的に食塩が使われるため、安全で、家庭でも簡単に再生処理を行うことができます。

純水器とは

一方、純水器は水から不純物を徹底的に除去し、「純水」を生成する装置です。純水とは、水素と酸素の化合物であるH₂Oだけが残された状態で、ミネラルや有機物、微生物などが極力除去された水です。特に、不純物が極限まで取り除かれた水は「超純水」と呼ばれ、半導体基板のチップ洗浄などで使用されています。

純水設備では、超純水と純水のシステム構成が異なります。ここでは、一般的なイオン交換樹脂を使用した純水ボンベや家庭用洗車設備について説明します。業務用では逆浸透膜(RO膜)も使用されますが、今回は割愛します。

純水は主に工業用途、医療、実験室で使用され、最近では家庭用洗車にも利用されています。純水器の特徴は何でしょうか。まず、純水器には陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の2種類が使われます。軟水器とは異なり、陽イオンと陰イオンをそれぞれ除去して純水を生成します。たとえば、水道水を純水器で処理すると、陽イオン交換樹脂で陽イオンを、陰イオン交換樹脂で陰イオンを除去し、水素イオンと水酸化物イオンが放出されてH₂Oが生成されます。

軟水器と同様に、イオン交換樹脂の水素イオンや水酸化物イオンが減少すると、交換性能が低下するため、再生が必要になります。工業用の純水製造設備には再生設備が付属した大規模なシステムが使われますが、純水器ボンベの場合は専用の再生工場で再生が行われます。再生には、陽イオン交換樹脂に酸を、陰イオン交換樹脂にはアルカリを使用します。そのため、取扱いには注意が必要で、再生場所も限定されます。一般家庭では、軟水器とは異なり、自宅での再生は薬品の取扱いの問題から推奨できません。

設備上の違い

軟水器と純水器は、どちらもイオン交換樹脂を使用して水を処理する点で共通しています。軟水器は、専用のイオン交換樹脂を用いて硬水成分を取り除きますが、純水器も同様にイオン交換樹脂をボンベに充填して使用します。設備面では、再生設備を持たないボンベタイプの軟水器であれば、その基本原理は同じです。いずれもボンベ内にイオン交換樹脂を入れ、上部から処理したい水を流すだけです。

両者の大きな違いは、使用されるイオン交換樹脂の種類にあります。軟水器では、ナトリウムイオンが吸着している陽イオン交換樹脂のみを使用します。一方、純水器では陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の2種類を使い、それぞれに水素イオンと水酸化物イオンが吸着されています。

イオン交換樹脂のボンベ図を左に示しました。イオン交換樹脂にナトリウムイオンが吸着しているケースですと、

   樹脂ーNa + CaCL → 樹脂ーCa + NaCL  (陽イオン交換樹脂)

つまりカルシウムイオンとなりナトリウムイオンが放出(脱着)されます。

一方、純水樹脂ですと、

    樹脂ーH + Ca  → 樹脂ーCa + H (陽イオン交換樹脂)

    樹脂ーOH+ CL  → 樹脂ーCL + OH (陰イオン交換樹脂)

             H + OH    → H2O (水)

家庭用では、再生設備を別とすれば、違いはイオン交換樹脂の種類だけであり、設備自体は同じでも問題ありません。

イオン交換樹脂の役割と特性

イオン交換樹脂は、化学分離技術の一つとして広く利用されており、特に水処理分野では重要な役割を果たしています。この技術は、液体中に含まれるイオンを別のイオンと直接交換することで、特定の成分を除去したり、不純物を取り除いたりするプロセスです。イオン交換樹脂には、さまざまな種類があり、用途に応じて選び方が異なります。また、イオン交換樹脂は、環境保護や水質改善にも貢献しており、多くの産業でその特性が活かされています。

イオン交換樹脂の特徴

イオン交換樹脂は、一般的にポリスチレン鎖とジビニルベンゼンの共重合体からなる、直径300μm~1200μmの高分子ビーズです。このビーズの表面には特定のイオンを吸着する官能基が存在し、それによってイオン交換作用が可能になります。イオン交換樹脂は陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂に大別され、陽イオン交換樹脂は陽イオンを、陰イオン交換樹脂は陰イオンを吸着・脱着します。たとえば、強酸性陽イオン交換樹脂の官能基はスルホン酸基、強塩基性陰イオン交換樹脂では4級アンモニウム基が使用されます。さらに、官能基の種類によって酸性や塩基性の強さが異なる弱酸性陽イオン交換樹脂や弱塩基性陰イオン交換樹脂もあり、用途に応じて使い分けられています。

水処理における役割

水処理におけるイオン交換樹脂の役割は多岐にわたります。特に、飲料水や工業用水のろ過・処理において、イオン交換樹脂は水中の硬度成分や重金属、不純物を除去する手段として利用されます。たとえば、硬水を軟水に変える過程では、カルシウムイオンやマグネシウムイオンがナトリウムイオンと置き換えられることで、水の硬度を下げることができます。

また、工業用水の処理では、イオン交換樹脂が重金属や有害物質の除去に寄与します。精密機器や製薬業界では、水質が求められるため、非常に厳密な水処理が必要とされます。この点において、イオン交換樹脂は非常に有効な方法の一つです。さらに、イオン交換技術は環境保護にも貢献し、汚染水の浄化や再利用を促進する手段として注目されています。

イオン交換樹脂はその特性と役割により、持続可能な水処理技術の一環として重要です。今後も新しい技術の進歩により、さらに効果的な利用法が開発されることが期待されています。

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