【特別回】 私たちが考える「良い軟水器」を形にしてみました ~ドリップ式軟水器と据置型軟水シャワー、その設計の考え方~ (全5回 軟水を科学する)
これまで「軟水を科学する」では、実験を通して、樹脂の種類や量だけでなく、樹脂層の高さ、水の流れ方、線流速、装置の構造が軟水性能に大きく関係することを見てきました。
では、こうした考え方を実際の軟水器に取り入れると、どのような形になるのでしょうか。
今回は特別回として、当社が販売している「ドリップ式軟水器」と「据置型軟水シャワー」をご紹介します。
一見するとまったく異なる2つの軟水器ですが、どちらも基本となる考え方は同じです。それは、「イオン交換樹脂を入れるだけではなく、樹脂が効率よく働けるように使う」ということです。
少量の水をつくるドリップ式と、大きな流量を必要とするシャワー用の据置型。それぞれの用途に合わせて、どのような考え方で構造を決めているのかを見ていきましょう。
これまでの実験から見えてきた「良い軟水器」
これまでの実験から、軟水器の性能はイオン交換樹脂の量だけでは決まらないことが見えてきました。
もちろん樹脂量は、処理できる硬度成分の総量を左右する重要な要素です。しかし、実際にどこまで硬度を下げられるかは、樹脂の種類や量、樹脂層の高さ、線流速、そして水の流れ方などにも影響されます。
つまり大切なのは、単に多くの樹脂を入れることではなく、その樹脂が十分に働ける条件をつくることです。
ここでは、これまでの実験を簡単に振り返りながら、こうした考え方を実際の軟水器の設計にどのように取り入れたのかを見ていきます。
樹脂量だけでは軟水性能は決まらない
一般的に、イオン交換樹脂は量が多いほど、多くの硬度成分を除去することができます。これは、樹脂量が増えるほど、利用できるイオン交換容量も大きくなるためです。
しかし、樹脂量が多ければ、それだけで十分な軟水性能が得られるわけではありません。
これまでの実験でも、同じようにイオン交換樹脂を使用していても、樹脂層の高さや水の流し方、線流速などによって、処理後の水質に違いが生じることを確認してきました。
つまり、樹脂量は「どれだけの硬度成分を処理できるか」を考えるうえで重要ですが、実際にその能力を十分に引き出すためには、樹脂をどのような状態で配置し、どのように水を通すかも重要になります。
大切なのは、樹脂をたくさん入れることではなく、入れた樹脂をできるだけ有効に使うことです。
この考え方が、今回ご紹介するドリップ式と据置型、二つの軟水器の設計にもつながっています。
水を「どう樹脂に通すか」が大切
次に重要なのが、水をどのようにイオン交換樹脂へ通すかという点です。
水の流れが速すぎると、樹脂と水が接触する時間が短くなり、イオン交換が十分に進みにくくなります。一方、樹脂層の中で水の流れに偏りが生じると、水が多く流れる部分と、ほとんど利用されない部分ができてしまいます。
その結果、十分な量の樹脂が入っていても、樹脂層全体を有効に使うことができず、期待した軟水性能が得られない場合があります。
そのため軟水器では、
適切な流速で、樹脂層全体にできるだけ均一に水を通すこと
が重要になります。
これまでの実験でも、同じイオン交換樹脂を使用していても、水の流し方や樹脂層のつくり方によって、処理後の水質に違いが生じることを確認してきました。
つまり、良い軟水器を考えるうえでは、樹脂量だけでなく、「水が入口から出口まで、どのように樹脂層を通っているのか」を見ることも大切なのです。
用途が違えば、適した軟水器の形も変わる
軟水器に求められる性能は、どのような用途で、どれくらいの水を使うのかによって変わります。
例えば、少量の軟水をゆっくりつくる場合と、シャワーのように多くの水を連続して使用する場合では、必要となる樹脂量や装置の大きさ、水の流し方は大きく異なります。
少量の水であれば、流量を抑えながら一定の樹脂層を通すことで、比較的少ない樹脂でも効率よく利用できます。一方、シャワーのような大きな流量を処理する場合には、十分な樹脂量と樹脂層高を確保するとともに、線流速や水の流れを考えた構造が重要になります。
つまり、良い軟水器には一つの決まった形があるわけではありません。
必要な水量と求める水質に合わせて、イオン交換樹脂が効率よく働く構造を選ぶことが大切です。
こうした考え方から、当社では用途の異なる二つの軟水器を採用しています。
一つは、少量の軟水をゆっくりつくる「ドリップ式軟水器」。もう一つは、シャワーのような大流量に対応する「据置型軟水器」です。
ここからは、それぞれがどのような考え方で設計されているのか、実際の構造を見ながらご紹介します。
少量の軟水をつくる「ドリップ式軟水器」
ドリップ式軟水器は、少量の水をゆっくりとイオン交換樹脂に通すことで軟水をつくる装置です。
大きな流量を処理するのではなく、必要な量の水を少しずつ処理するため、比較的少ない樹脂でも、その性能を有効に活用できることが特徴です。
これまでの実験でも見てきたように、ポイントは単に樹脂を水に触れさせることではありません。一定の樹脂層をつくり、その中を水がしっかりと通過するようにすることが重要です。
当社のドリップ式軟水器も、このシンプルな考え方を基本として設計しています。
少ない樹脂をできるだけ有効に使う
ドリップ式軟水器の特徴は、コンパクトな構造の中で、限られた量のイオン交換樹脂をできるだけ有効に使うことにあります。
そのために重要なのが、一定の高さを持った樹脂層をつくり、水がその樹脂層を上から下へ順番に通過する構造です。
これまでの実験でも、同じ量の樹脂を使用していても、単に水に浸す場合と、樹脂層を形成して水を通過させる場合では、軟水化の程度に違いが見られました。
ドリップ方式では、水を少しずつ流すことで樹脂との接触時間を確保するとともに、水が一定の樹脂層を通過することで、樹脂を効率よく利用することができます。
つまり、ドリップ式のポイントは、
「少ない樹脂だから性能が低い」のではなく、その限られた樹脂をどのように使うか
にあります。
この考え方が、コンパクトなドリップ式軟水器の基本となっています。
ゆっくり流して、しっかり軟水化する
ドリップ式軟水器のもう一つの特徴は、水を少量ずつ、ゆっくりと樹脂層に通すことです。
流量を抑えることで、水が樹脂層を通過する時間を確保でき、カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分とイオン交換樹脂との交換反応を進めやすくなります。
これまでの実験でも、樹脂量だけでなく、水を流す速さや樹脂層の高さが処理後の水質に影響することを確認してきました。
特にドリップ式では、一度に大量の水を処理するのではなく、必要な量をゆっくり処理することで、限られた樹脂を有効に利用することを考えています。
ただし、原水の硬度が高くなれば、それだけ樹脂が処理する硬度成分も多くなるため、同じ樹脂量でも処理できる水量は少なくなります。
つまり、
「少ない樹脂量」×「適切な樹脂層」×「ゆっくりとした水の流れ」
を組み合わせることが、ドリップ式軟水器の基本的な考え方です。
実際のドリップ式軟水器を見てみよう
1.現在販売中のドリップ式軟水器 ― シンプルな構造で軟水をつくる
現在販売しているタイプについて、説明図を使いながら、樹脂量・樹脂層・水の流れ・処理方法を紹介します。「なぜこの形にしたのか」をこれまでの実験結果と結び付けます。

ここに示すのは、実際に販売している商品(SOFT MAKER Pro)です。図で示すように、通常の三角錐の下部が網の目となり、樹脂が漏れないように、さらに樹脂とここでは活性炭も充填、充填箇所は三角錐ですが下部の網の目からの樹脂層が形成される形となっています。つまり通常のコーヒのドリッパーとはことなり、上部から注いだ水が一定の樹脂層を通る仕様となっています。淡水魚、水草などでの少量での使用として製品化しています。
2.新しいドリップ式軟水器 ― 実際に軟水ができる様子を見てみる
現在、もう一つ新しいドリップ式軟水器「SOFT MAKER ProⅡ」の販売を開始しました。
基本となる考え方はSOFT MAKER Proと同じですが、ProⅡでは、よりキッチンで使いやすいように実際のコーヒードリッパーに近い形状を採用しています。
使用するイオン交換樹脂についても、飲料用途への適合を確認した樹脂を使用し、さらに活性炭を組み合わせています。活性炭にはPFAS処理にも用いられるグレードを採用していますが、本製品ではPFAS除去性能そのものを保証するものではありません。水道水だけでなく、原水水質を確認したうえで井戸水などへの応用も考えられる構成です。
そして、この製品でも最も大切にしているのが、一定のイオン交換樹脂層の中を水が通過することです。
今回の動画では、
原水を入れる → 樹脂層を通過する → 処理水が得られる → 硬度を確認する
という一連の流れをご覧いただけます。
「軟化できない」という声から始まった商品開発
実は、SOFT MAKER Proを開発するきっかけの一つに、当社が販売する軟水用カチオン交換樹脂に寄せられた購入者のコメントがありました。
その方は、コーヒーフィルターに樹脂を入れて水中に浸し、空気によって水を動かす方法を試されていましたが、「十分に軟化できない」という内容でした。
しかし、これまでの実験でもご紹介したように、イオン交換樹脂を水に浸しておくだけでは、樹脂全体を効率よく利用することは難しくなります。
そこで当社からも、水を一定の樹脂層に通過させることの重要性をご説明しました。
そして、このやり取りを一つのきっかけとして、
家庭でも、難しい操作をせずに、水を一定の樹脂層へ通すことはできないだろうか。
と考えて製作したのが、ドリップ式軟水器です。
SOFT MAKER ProⅡでもこの考え方は変わりません。形はコーヒードリッパーに近くても、その中では水が一定の高さを持ったイオン交換樹脂層を通過するようにしています。
軟水になったかを「綿棒」で簡単に確認
SOFT MAKER ProⅡでは、もう一つちょっとした工夫をしています。
硬度を確認するための発色試薬は便利ですが、液体の試薬を直接扱うと、手に付着して皮膚まで発色してしまうことがあります。
そこで、当社では市販の硬度発色試薬を綿棒に染み込ませ、乾燥させたものを参考用として同梱しています。
使い方は簡単です。処理水を綿棒の先端に十分に染み込ませ、発色を確認します。
青色 → 硬度が低い状態
赤~赤紫色 → 硬度成分が残っている状態
という大まかな確認ができます。
使用している発色試薬では「硬度2 ppm以下で青色、2 ppmを超えると赤色」とされていますが、実際には硬度によって青、赤紫、その中間的な色なども現れます。そのため、この綿棒では硬度を細かく読み取るのではなく、「青色か、それ以外か」程度の簡易確認として使用することをおすすめしています。
当社で試した範囲では、試薬を染み込ませて乾燥させた綿棒を約1か月保管した後でも、参考判定として発色を確認できました。ただし、これは保存性能を保証する試験ではありません。
また、この方法はあくまで参考用の簡易判定です。硬度を数値として確認したい場合には、市販の低濃度硬度用パックテストなどを使用してください。
3.形は違っても、基本となる考え方は同じ
今回ご紹介した2種類のドリップ式軟水器は、形状や使い方は異なりますが、基本となる考え方は共通しています。
「一定の樹脂層をつくる」
「水を樹脂層にしっかり通す」
「用途に合った流量で処理する」
ドリップ式では、一度に大量の水を処理するのではなく、水をゆっくりと樹脂層に通すことで、比較的少ない樹脂をできるだけ有効に利用することを考えています。
そして、軟水器の形に一つの正解があるわけではありません。大切なのは、必要な水量や用途に合わせて、イオン交換樹脂が効率よく働ける構造になっていることです。
少量の軟水をつくるドリップ式では、この考え方をシンプルな構造で実現しています。
では、シャワーのようにより多くの水を連続して処理する場合はどうでしょうか。
次は、同じ考え方を大流量の処理に応用した据置型軟水器について見ていきます。
シャワーの流量に対応する「据置型軟水器」
ドリップ式が少量の水をゆっくり処理するのに対して、シャワーでは比較的大きな流量の水を連続して軟水化することが求められます。
そのため、シャワー用軟水器では、単にイオン交換樹脂を入れるだけではなく、必要な樹脂量を確保しながら、どのような流速で、どのように樹脂層へ水を通すかが重要になります。
当社では、このような考え方から、十分な樹脂量と樹脂層高を確保できる据置型の軟水器を採用しています。
また、ドリップ式では一定量を処理した後にイオン交換樹脂を交換する使い方を基本としていますが、据置型では、使用した樹脂を食塩水で再生し、繰り返し使用することを前提としています。
つまり据置型では、
「大きな流量をしっかり処理する」ことに加えて、「使用した樹脂を再生して繰り返し使う」
という点も重要な設計要素になります。
ここからは、シャワーのような大きな流量を処理するための樹脂量・樹脂層・水の流れ、そして長く使用するための再生の仕組みについて、具体的に見ていきます。
シャワーでは「流量」が大きなポイント
シャワー用の軟水器では、実際に使用する水量に対応できることが重要です。一般的なシャワーでは1分間に数L程度の水が連続して流れるため、十分な流量を確保しながら、硬度成分をしっかり除去する必要があります。
一方で、イオン交換樹脂に対して水を速く流しすぎると、樹脂との接触時間が短くなり、硬度成分の除去が十分に進まない場合があります。
そのため、シャワー用軟水器では、単に水をたくさん流せればよいのではなく、樹脂量、樹脂層高、装置の断面積、そして線流速を考えた設計が重要になります。
当社で取り扱っている据置型軟水器には、工業用の軟水設備にも使用される軟水化用イオン交換樹脂を充填しています。そして、シャワーで使用する流量を想定し、十分な樹脂量と樹脂層を確保できる形状と容量としています。
つまり、工業用のイオン交換塔でも基本となる、
「一定の樹脂層をつくり、適切な流速で、その樹脂層にしっかり水を通す」
という考え方を、家庭で使用する据置型軟水器にも取り入れています。
5Lの樹脂を「充填層」として使う
当社で取り扱っている据置型軟水器では、約5Lの軟水化用イオン交換樹脂を充填しています。

樹脂量をある程度確保することには、大きく二つの意味があります。一つは、シャワーやお風呂などで使用するより多くの水を軟水化できること。もう一つは、再生するまでの使用期間を長くできることです。
軟水化用のイオン交換樹脂は、水中のカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を取り込み、その代わりにナトリウムイオンを水中へ放出します。しかし、この交換能力には限りがあります。
使用を続けると、樹脂が次第にカルシウムやマグネシウムで占められ、やがて十分な硬度除去ができなくなります。つまり、樹脂が硬度成分で飽和してくるわけです。
特に樹脂量が少ない場合には、同じ原水硬度・使用水量であれば、より早く交換能力を使い切ることになります。一方、樹脂量を多く確保すれば、処理できる硬度成分の総量も大きくなるため、より多くの軟水をつくることができ、再生までの間隔も長くすることができます。
また、据置型では単に5Lの樹脂を容器に入れているだけではありません。水は、
原水入口 → イオン交換樹脂層 → 下部スクリーン → 中央の集水管 → 軟水出口
という経路で流れ、一定の高さを持った樹脂層を通過する構造になっています。
このように、十分な樹脂量と樹脂層高を確保し、その樹脂層に水をしっかり通すことで、シャワーの流量に対応しながら樹脂を有効に利用することを考えています。
ただし、5Lの樹脂を使用していても、交換能力が無限に続くわけではありません。使用を続ければ、いずれカルシウムやマグネシウムで交換能力が低下します。
そこで必要になるのが、次にご紹介する「イオン交換樹脂の再生」です。
この最後の一文から、そのまま「食塩で再生して、繰り返し使用する」へ進めると非常に自然です。
食塩で再生して、繰り返し使用する
据置型軟水器の大きな特徴の一つが、イオン交換樹脂を再生して繰り返し使用できることです。そのため、一般的な据置型軟水器には、再生設備が備えられているか、食塩水による再生ができるように設計されています。
軟水化用のイオン交換樹脂は、水中のカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を取り込み、その代わりにナトリウムイオンを放出します。使用を続けると、やがて樹脂の交換能力が硬度成分によって使われ、十分に軟水化できなくなります。

これは樹脂が「劣化」したのではなく、硬度成分によって交換能力が飽和した状態です。
そこで食塩水を使って再生します。食塩水に含まれる多量のナトリウムイオンによって、樹脂に取り込まれたカルシウムやマグネシウムを追い出し、再び軟水化できる状態へ戻します。
軟水化 → 硬度成分で飽和 → 食塩水で再生 → 再び軟水化
このサイクルを繰り返すことで、同じイオン交換樹脂を長期間使用することができます。
ただし、樹脂を永久に使用できるわけではありません。長期間にわたって採水と再生を繰り返すと、汚染や物理的損傷などによって、再生しても本来の性能まで十分に回復しなくなることがあります。**これがイオン交換樹脂の「劣化」**です。
使用条件によって異なりますが、家庭用では数年、例えば5年程度を交換時期の一つの目安として考えることができます。ただし、年数だけでなく、再生後の軟水性能を見ることが大切です。
例えば、以前よりも再生から次の再生までの期間が徐々に短くなってきた場合には、樹脂そのものの性能低下を疑い、交換を検討する一つの目安になります。
このように据置型軟水器は、十分な樹脂量で多くの水を処理し、能力を使い切ったら再生して再び使用するという、イオン交換樹脂の特徴を活かした仕組みになっています。
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