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【第5回】 良い軟水器を見極める ~「軟水」という言葉だけでなく、その中身を見てみよう~ (全5回連載 軟水を科学する)

軟水器を選ぶとき、単に「軟水になる」という言葉だけでは、その性能を十分に判断することはできません。

これまでの実験では、イオン交換樹脂の種類や量だけでなく、樹脂層の高さ、水の流れ方、線流速、装置の構造によって、得られる軟水の状態が変わることを確認してきました。

最終回では、これまでの内容を振り返りながら、「どこまで硬度を下げられるのか」「どのような構造なのか」「自分の使い方に合っているのか」という視点から、軟水器を選ぶためのポイントを整理します。

まずは「どこまで軟水になるのか」を見る

「軟水」と一口に言っても、その硬度はすべて同じではありません。軟水器の種類や使用条件によって、処理後の硬度には違いが生じます。

そのため、軟水器を評価するときには、単に「軟水になったか」だけではなく、「どの程度まで硬度を下げられたのか」を見ることが大切です。

ここでは、処理前後の硬度に注目しながら、軟水器の性能を確認する方法について考えていきます。

「軟水」でも硬度は同じとは限らない

「軟水」とは、カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分が少ない水のことです。しかし、同じ「軟水」と呼ばれる水でも、実際の硬度は同じとは限りません。

例えば、カートリッジ型と据置型の軟水器では、イオン交換樹脂の量や樹脂層の高さ、水の流れ方などが異なるため、処理後の硬度にも差が生じることがあります。

そのため、軟水器の性能を見るときには、「軟水になる」という表示だけで判断するのではなく、実際にどの程度まで硬度を下げられるのかを確認することが大切です。

処理水の硬度は、硬度試薬や測定器などを使って確認することができます。

原水の硬度と処理後の硬度を確認しよう

軟水器の性能を確認するためには、まず原水の硬度を知ることが大切です。水道水や地下水など、使用する水の硬度を把握することで、軟水器によってどの程度硬度が下がったのかを評価できます。

そして、軟水器を通した後の水についても硬度を測定し、原水と比較してみましょう。

原水の硬度 → 軟水器で処理 → 処理水の硬度

このように処理前後を比較することで、軟水器が実際にどの程度機能しているのかを確認できます。

また、硬度は地域や水源によって異なるため、「どの軟水器を使うか」だけでなく、「どのような水を処理するか」も軟水性能を考えるうえで重要です

できれば実際の処理水を測ってみよう

軟水器の性能を確認する最も分かりやすい方法は、実際に処理後の水の硬度を測定することです。

使用開始時だけでなく、定期的に測定しておくと、軟水性能が維持されているかを確認できます。また、処理水の硬度が徐々に上昇してきた場合には、イオン交換樹脂の交換や再生時期を判断する目安にもなります。

一方、軟水シャワーの場合には、日常的な使用感の変化も一つの目安になります。十分に硬度成分が除去された軟水では、石けんやシャンプーが泡立ちやすくなります。ところが、イオン交換樹脂の交換能力が低下して硬度成分が処理水に残るようになると、以前より泡立ちが悪くなったと感じることがあります。

この変化を、樹脂の交換や再生を考えるきっかけとして利用するのも一つの方法です。例えば、

「最近、泡立ちが悪くなった」→ 硬度発色試薬で処理水を確認する

という使い方です。

もちろん、泡立ちは使用する石けんやシャンプー、水温などにも影響されるため、それだけで硬度を判断することはできません。しかし、日常の感覚をきっかけにして、必要なときに実際の硬度を測定するという方法は、家庭で軟水器を管理するうえで分かりやすい方法の一つです。

大切なのは、「軟水器だから軟水になっている」と考えるのではなく、実際の水質や日常の変化を確認しながら使うことです。

イオン交換樹脂の「量」だけで判断しない

軟水器を選ぶ際、多くの消費者はイオン交換樹脂の「量」に注目しがちです。しかし、樹脂の量だけではその性能や効率を判断することはできません。この章では、イオン交換樹脂の種類や設計、流れの特性がいかに軟水の質に影響を与えるかについて詳しく解説します。

どんなイオン交換樹脂が使われている?

軟水器の中心となる材料が、イオン交換樹脂です。

イオン交換樹脂にはさまざまな種類があり、取り除きたいイオンや用途によって使い分けられています。その中で、一般的な軟水器に使用されるのが、ナトリウム形(Na形)のカチオン交換樹脂です。

この樹脂は、水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を取り込み、その代わりにナトリウムイオンを水中へ放出することで軟水をつくります。

ここで大切なのは、「イオン交換樹脂なら何でも同じ」というわけではないことです。

樹脂には種類だけでなく、交換容量や粒径、構造などにも違いがあります。また、食品・飲料用途などでは、その用途への適合性を確認することも重要です。

そして、これまでの実験で見てきたように、良い軟水をつくるためには、樹脂そのものの性能だけでなく、どれくらいの量を使うのか、どのような樹脂層をつくるのか、そこへどのように水を流すのかまで含めて考える必要があります。

つまり軟水器を見るときには、

「樹脂が入っているか」ではなく、「どのような樹脂を、どのように使っているのか」

という視点を持つことが、軟水器の性能を考える第一歩になります。

樹脂量と樹脂層高を見てみよう

次に注目したいのが、イオン交換樹脂の量と樹脂層の高さです。

樹脂量が多くなれば、それだけ多くの硬度成分を交換できるため、一般的には処理できる水量も増えていきます。しかし、軟水器の性能は樹脂量だけで決まるわけではありません。

これまでの実験でも見てきたように、同じ量のイオン交換樹脂を使用していても、どのような高さの樹脂層をつくり、そこへどのように水を通すかによって、得られる水質は変わります。

樹脂層が極端に浅いと、水が短い距離で樹脂層を通過することになり、硬度成分を十分に交換できないまま出口へ到達しやすくなります。反対に、一定の樹脂層高を確保することで、水は順番に樹脂と接触しながら流れ、より安定したイオン交換が行われやすくなります。

ただし、樹脂層を高くすればよいというわけでもありません。実際の軟水器では、必要な処理水量、流量、装置の大きさ、圧力損失などを考えながら、適切な樹脂量と樹脂層高を設定する必要があります。

つまり、軟水器を見るときには、

「樹脂が何L入っているか」だけではなく、「その樹脂がどのような層をつくり、水がどのように通過する構造になっているか」

まで見てみることが大切です。

線流速と水の流れ方も重要

最後に確認しておきたいのが、線流速(LV)と水の流れ方です。

同じイオン交換樹脂を使用していても、水をどのくらいの速さで樹脂層に通すかによって、軟水化の状態は変わります。

水の流速が速すぎると、硬度成分が樹脂と十分にイオン交換する前に出口へ到達し、硬度成分が処理水側へ漏れやすくなります。

また、流速だけでなく、樹脂層全体に水ができるだけ均一に流れているかも重要です。水が一部に偏って流れると、十分に使われない樹脂が生じ、せっかく充填したイオン交換樹脂を有効に利用できなくなります。

これまでの実験でも見てきたように、大切なのは単に水と樹脂を接触させることではありません。

「適切な流速で、一定の樹脂層に、できるだけ均一に水を通す」

ことが、安定した軟水をつくるための基本となります。

そのため軟水器を選ぶ際には、樹脂量だけを見るのではなく、装置の太さや樹脂層高、水の入口から出口までの流れ方にも注目してみましょう。

「量」だけではなく、「種類・樹脂層・流れ」を見る

ここまで見てきたように、良い軟水をつくるためには、一つの条件だけを見ればよいわけではありません。

どのようなイオン交換樹脂を使っているのか。
どれくらいの樹脂量と樹脂層高があるのか。
そして、その樹脂層にどのような速さで、どのように水を通しているのか。

こうした条件が組み合わさって、軟水器としての性能が決まってきます。

つまり、

「樹脂の種類」×「樹脂量・樹脂層」×「線流速」×「水の流れ」

という視点で軟水器を見ることが大切です。

自分の使い方に合った軟水器を選ぶ

軟水器を選ぶ際には、自分の使用用途や必要な水質、さらにはメンテナンスのしやすさなどを総合的に考慮することが重要です。市場にはさまざまな種類の軟水器が存在しますが、その中から自分にぴったりのものを選ぶためにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。

必要な流量と軟水の程度を考える

軟水器を選ぶときには、まず「どのような用途で、どれくらいの水を使いたいのか」を考えてみましょう。

例えば、少量の軟水をつくる場合と、シャワーのように毎分数Lの水を連続して使用する場合、さらに家庭全体の水を処理する場合では、必要となる流量は大きく異なります。

そして大切なのは、単に「たくさん水が流れる軟水器」を選ぶことではありません。

必要な流量を確保した状態で、どこまで硬度を下げることができるのかを見ることが重要です。

また、原水の硬度も地域や水源によって異なります。同じ軟水器を使用しても、原水硬度が高くなれば樹脂への負荷も大きくなり、処理できる水量や再生・交換までの期間も変わってきます。

そのため、軟水器を選ぶ前に、できれば自宅の水道水の硬度を確認し、

「原水の硬度」→「必要な使用流量」→「どの程度まで硬度を下げたいか」

という順番で考えてみると、自分の用途に合った軟水器を選びやすくなります。

つまり、「どれだけ流せるか」だけでなく、「その流量で、どこまで軟水にできるか」を見ることが大切です。

参考として全国の硬度成分を閲覧できるサイトを以下に示します。

参考サイト
東京大学「日本の水の個性を解析―全国の水道水質一斉調査―」
東京都水道局「水の硬度」
東京都水道局「水質データ」

交換・再生・メンテナンスも確認する

軟水器を長く使うためには、樹脂の交換や再生などのメンテナンスも確認しておきましょう。

イオン交換樹脂は、使い続けるとカルシウムやマグネシウムを取り込み、やがて軟水をつくる能力が低下します。

その後の使い方は、軟水器によって異なります。

カートリッジや樹脂を交換するタイプもあれば、食塩を使って樹脂を再生し、繰り返し使用するタイプもあります。据置型では、後者の方式がよく使われています。

購入するときには、

  • 交換と再生のどちらの方式か
  • どのくらいの頻度で必要になるか
  • 自分で簡単に作業できるか
  • 交換樹脂や再生用の食塩などを入手しやすいか

といった点も確認してみましょう。

軟水器は、本体の価格や性能だけでなく、「無理なく使い続けられるか」も大切な選択ポイントです。

「良い軟水器」とは何かを考える

「良い軟水器」は一つではありません。

大切なのは、自分が必要とする水量や水質、使い方に合った軟水器を選ぶことです。

今回の連載では、軟水とは何かというところから始まり、イオン交換樹脂の種類や量、樹脂層の高さ、水の流れ方、線流速、再生やメンテナンスまで見てきました。

これらはすべて、軟水器を自分で選ぶための「見るべきポイント」です。

「軟水になる」という言葉だけで判断するのではなく、

「どのくらい軟水になるのか」
「自分が必要な流量で使えるのか」
「どのような仕組みで軟水をつくっているのか」

という視点を持って、自分に合った軟水器を選んでみてください。

そのための判断材料をお伝えすることが、今回の「軟水を科学する」連載の目的です。

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この記事の著者

永田 祐輔

2022年3月、29年間勤務した大手水処理エンジニアリング会社から独立しました。前職では、イオン交換樹脂を中心とした技術開発、品質管理、マーケティング戦略において多くの経験を積んできました。これらの経験を生かし、生活に密着した水処理技術から既存の水処理システムまで、幅広いニーズに対応する新たな事業を立ち上げました。

このブログでは、水処理技術や環境保護に関する情報を発信しています。皆さんと共に、きれいで安全な水を未来に残すための方法を考えていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします!

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